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新【三色の楽譜】全6-1 

1「SANGA-編集会議」

 INS出版(株)東京都渋谷区道玄坂にあるスピリチュアルな記事
を専門に扱う出版社。雑誌名は『SANGA』

今、SANGA-2017年秋号に掲載する記事の編集会議をしていた。

その前に、この会社に無くてはならない存在がいる。
リーダーであり自称、審神者(サニワ)、名は大越久美子(54歳)

霊能者もどきや自称悟りを得た覚者と称する輩は非常に多い。

特にスピリチュアルの世界は目に見えない世界。

それを巧みに操り、高額の金銭を要求するという事例も後を絶たない。

そういう存在達を判定・査定する人物を審神者(サニワ)と呼ぶ。
ひと言で云うとスピリチュアル世界の鑑定人。

大越のサニワ能力は持って生まれたもの、本人曰く「私は生まれ変わる
度にサニワなの、私の目は誤魔化せません。私と対面する霊能者さんは
心してね・・・私に誤魔化しはききませんので・・・」が彼女の口癖。

数あるスピリチュアル系を扱う出版社の中でも、このI・N・S出版は、
大越の認めた内容の記事を扱うことで、信憑性も増し購読者の信頼度は
高かった。

若年層をターゲットにした、一般受けする記事を書く出版社とは一線を
おいていた。が、派手さに欠ける為、販売部数が伸び悩むのも否めない事実。

本物思考の読者には信頼のある出版社でもあった。それを知る人は他社に
原稿を掲載しないが、SANGAには掲載するという能力者が多いのも事実。

そして、この会社役員に大越という審神者の存在があるからである。


大越が「最近は知っての通り、ネット社会を好いことに『我こそは本物の
霊能力者・チャネラー・ヒーラー』の類が非常に多い。
私の知る限り今の時代が一番多いと思うの、本やネットなど身近な情報を
鵜呑みにしている人間も多い、これが今の精神世界の現状。
全部がニセ物とはいいません。

でも、私の知る限り本物ほど地味なの・・・
彼らは世間に自分の能力を知らしめよう的な、売名的要素が無いからなの。

これ事実よ、その数少ない本物とコンタクトをとって、その本物を
2017年秋号に紹介してみない?

少し難しい企画だけど・・・価値あると思うけど・・・どう?」

相田が「大越さんの言うことは解りました・・・でも、どうやって本物か
否かっていうことを、見極めればいいのか解りません。どうやれば・・・?」

大越が「地位・名誉・金・権力これが絡まないひと。総括した見極めは私に
任せてほしい。とりあえず情報を集めて、その中から厳選して決めましょう」

相田が「今まで、当社がインタビューした以外の方ですよね・・・」

「できればそうしたい・・・とりあえず何人かピックアップして、それから
人選しましょう。まずはそこからよ、各自情報をとって」


 相田が同僚の樫田に「樫田ちゃんどう思う?」

樫田が「どうって・・・大越室長の云う本物っていう人でしょっ・・・」

相田は「言いたいことは解るけど・・・なんかしっくりこないのよね・・・
その本物って・・・わたし的にはさっぱり理解できないの・・・」

「そこなのよ・・・」樫田の声が高くなった。

相田は目をまるくして「なに、いきなり・・・ビックリするでしょ・・・
なにが、どうしたの?」

「本物かどうかって漠然としてて、どれを本物というのか?
これといった定義というか尺度ががないでしょ・・・

とくに霊界など目に見えない世界のこと云われても、それが真実なのか
虚偽なのか?・・・あるいは真実でもどのレベルの世界なのか、我々普通人
にはさっぱり解らない・・・つまり判断基準がないと思わない?」

「つまり、定義を持てということ?じゃあその基準はなに・・・?」

樫田は目を瞑り指を折りながら「お金・権力・地位・名誉に囚われていない人?」

相田は「うん、・・・確かにそれって本物の人ほど縁遠い感じがするね・・・
仮に、本物は金持ちではいけないわけ?それも変よね・・・???」

樫田が「そう、でもそれだけじゃ、なにか足りない気がする・・・
そんな人は世の中にたくさんいると思わない?」

「そっか・・・なにか足りないか?・・・」

側で二人の会話を聞いていた後輩の森田が「愛・・・!」

相田が「愛か・・・うんなるほどそれかも、モリッチ良いこと言うね」

樫田が「なるほど、愛か・・・それよ、話しや行いに愛があるかどうか・・・」

森田が「でも、それってどうやって探すんですか?・・・」

樫田が「???だよね・・・モリッチあんたの発言って的を得てるけど・・・」

三人のあいだに沈黙が走った。


 それから二週間が過ぎ、各自の経過報告会議が始まった。

大越が「それぞれ経過を報告して頂戴。まず相田ちゃんから」

「はい、わたしは二人の事を調べてみました。
まずひとりはジプシー占いを生業としてるMASANAという女性です。
彼女は普通のOLとして長年勤務しておりましたが、5年前に交通事故で
臨死体験を経験したんです。

そして、自分が前世でジプシーをしていて、占い師だったという記憶が蘇り、
それまで勤めていた会社を辞め、本格的占い師としての人生を歩み始めました。

今では政財界からも相談に訪れる人がいるようです。若干40歳独身です」

大越が「う~~ん。で、もうひとりは?」

「はい、もうひとりは居酒屋の女将です。生まれつき霊能力があり、子供の頃
近所の墓場に知り合いの幽霊がいて、よく遊びに行ったと話しておりました。
IQが180とかで国立大学を卒業してます。

学生時代にアルバイトでやっていたホステスが楽しくて、卒業後は一般企業に
就職せず、そのままホステスを続け結婚。今は、死んだご主人とやっていた
居酒屋をそのまま経営。客の悩みを聞いてあげるのが日課となっているようです。
地元ではそれなりに有名な霊能力おばさんです」

大越は、その後も数人からの報告をじっと目を瞑ったまま聞いた。

「ふ・・・ん! つぎ、モリッチお願い」

「はい、私は皆さんと少し着眼点が違うんですね・・・」

大越が「どう違うの?まず、そこから話して・・・」


 「はい、私の場合は、ある中年の女性なんですけど・・・
覚者・・・つまり、覚醒した方ではなく、覚醒した三人の人物と、彼女が
直接会って話したり、指導を受けたりした経緯があるんです。
60歳前後と思れるかたで、彼女のその話しの内容に興味を覚えました」

大越は「具体的にどういうところが興味深いわけ・・・?」

「はい、彼女曰く悟りを開いた人間は、猿と人間の違いがある。
同じ、スピリチュアルを語るんでも、人間の立場から語るスピリチュアルと、
人間を超越した立場、つまり悟りを開いた人間が語るスピリチュアルでは、
見解の違いが大きくある。彼女はそう言ってました。

それと、悟りには三人三様の悟りがあり・・・その悟りにも深さがあるって、
話してました。私は覚者もそうですけど、この世で三人もの覚者と知り合った、
その女性に興味を持ちました・・・」

真剣に語るモリッチに大越は何かを感じた。

次の瞬間、目を大きく見開き「うん・・・それだ!・・・」

周りの人間は一瞬理解できないでいた。

樫田が「???・・・どれだ?」

瞬間全員がこけた。

大越は「その女性だよ・・・その女性に興味がある・・・考えてごらんよ。
一生涯で悟りを開いた人間に出会えるチャンスなんて、そう滅多にある事じゃ
あない。それをその女性は三人の覚者と会ってる。もしそれが本当ならその
女性に眼力があるということ。そう思わない・・・?」

相田は、なるほど・・・そういう捉え方もあるんだ・・・と感じていた。

大越が「その女性と私とモリッチで、一度会ってみたいからアポとって
くんない。日時と場所はその女性に合わせるから・・・」

モリッチが「あの~~う。その女性・・・札幌在住なんですけど・・・」

大越が「札幌か~~うん、でもかまわない。
すぐにアポとりな、但し、何度も会えないから二日で治まるように予め
聞きたいことなど、まとめておきなね・・・もし、OLなら土日でも
かまわないから・・・じゃ、アポ頼む・・・」

「はい解りました」

大越が「今日はとりあえず解散・・・席に戻って!」
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