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【Pino】10-6

6「小説請負人ハマⅠ」

私はハマ、職業は作家。貴方の為だけのオリジナル小説を書きます。  

恋愛・推理・サスペンス・SF・ジャンルは問いません。

貴方の希望する小説を貴方の為だけに執筆します。 

当然、貴方の大切な人に送る小説もOKです。 

人気小説は依頼者のパラレルな自分の自叙伝。 

別世界の自分の半生を描いた小説に人気があります。 

依頼者が来た場合、その依頼者の生い立ちと小説にしてみたい事柄、 
登場人物の名前を教えてもらい、ジャンルを聞いて依頼者にあった
書き方をします。内容が決まってない人は相談に応じます。 

最後にこの小説は誰の為に作成するのか? 

ここがポイントになり、それによってメッセージ性が変わってきます。

こんなすべり出しで客と1時間ほど打合せをしてから、制作に一週間ほど
時間を掛けて書き上げるというもので、費用は一律10万円。 

出張取材が必要な場合は別途料金で請負った。 

ハマの発想は今までこの業界には類がない。評判が評判を呼び予約も多くあった。 
 
今日も依頼者の訪問があった。


 「いらっしゃいませ」 

「小説を書いて下さい」来たのは初老の紳士だった。 

「はい、ではいくつか質問をさせて下さい。まず、この小説は誰の為に
作るものですか?」 

「妻の為です。昨年、体調不良で他界した妻の為です。58歳でした」 

「内容は随筆風・恋愛風・物語風等どのように描きたいですか?」 

「童話風で・・・妻を主人公としてケルトの妖精にしたてて欲しいです。 
生前、妻はケルト文化の神秘的な世界が好きだったものですから・・・」 

ハマは一瞬目を瞑り瞑想に入った。時間にして一瞬だったがハマには
数時間の感覚があった。ハマがいったん瞑想すると時間を超越できる
能力があった。

「はい、もう私の中にイメージが湧いてきました。あとはご主人さん
をどのような場面で登場させますか?」 

「僕は要りません。登場させないで下さい。妻には最後まで何一つ優しい
ことをしてあげられず苦労ばかり掛けてきたので、せめてこの小説は
僕抜きで違う伴侶と結ばせてやりたいのです。この小説は妻に捧げる
レクイエムのつもりです・・・」

ハマには視線をさげた依頼者の心根が辛く思えた。 

「そうですか解りました。今日の打合せの大筋を2~3日で通知します。 
それで良ければ執筆活動に入ります。それで宜しいでしょうか?」

「はい、お願いいたします」 

ハマは、概略の作成に取りかかった。
 

 ここはイギリスはウェールズにある小さな漁村。 

古来からのケルトの風習が多く残るこの村のある人間の家の屋根裏に 
ブラウニーという家事が好きな妖精がいた。 

よく人間の手伝いをしてくれ、報酬のミルクや蜂蜜を忘れたり、
仕事に文句をつけたりすると、ブラウニーは怒って家を
めちゃくちゃにする事もある。 

また、丁寧に扱わないと悪戯好きなボガードになりさがり、更に落ちると
醜くて物を壊したり投げつけたりするドビーになってしまう。

そのブラウニーがある時、人間の青年ニップに禁断の恋をしてしまう。 

妖精ブラウニーは事あるごとに山に入り、フェニックスの落とした羽を
集め帽子を作ったり、妖精ならではの手法による小物を作りニップに
手作りの小物をプレゼントした。 

ニップもその厚意に報いるためにブラウニー専用のドールハウスを作って
プレゼントをしたりと、二人の間はだんだんと深まりやがてふたりは
恋に落ちしまった。 

人間と妖精という大きな壁を抱えたまま時は過ぎていった。 

そんなある日、ケルトの神話伝説に人間の青年に恋をした妖精が
トネリコ山脈のどこかにある、ココというキノコと白龍の涙を煎じて
満月の夜に妖精が飲むと人間に変身出来るというのを耳にした。

ブラウニーはその伝説に掛けてみようと決断した。

ブラウニーの身内から「そんな伝説に信憑性がない。トネリコ山脈は
危険な山だから辞めた方がいい」 

「妖精は妖精同士で結ばれるべきだ・・・」との声も多くあった。 

そんなケルトの妖精ブラウニーの半生を描いた物語。
 
 二日後ハマは依頼者に概略を説明した。

電話の向こうで依頼者のむせび泣く声が聞こえた。 

それから6日間で小説は完成し、製本され依頼者に手渡された。 

「はい、この世でただひとつの物語です。お読み下さい」そう言って渡された。 

その4日後にお礼の手紙がハマの手元に届いた。 

心のこもった感謝の手紙だった。


 「いらっしゃいませ」依頼者の訪問であった。 

ハマは、ひととおり説明し相手の言葉を待った。

「あのう・・・」 

「はい?」

「こんなお願いの前例ありますか?」 

「はい!どんな事でしょうか?」 

「主人公は実は宇宙人の子で、大きくなって本当の自分に目覚め、 
地球を救うという使命を思い出す・・・という内容で描けませんか?」

「はい、可能ですよ。では登場人物の名前を数人教えて下さい。
二日前後にこちらから大筋を連絡します。それでよければ一週間で
描けると思います」 

「はい!よろしくお願いします」

二日して依頼者に概略をFAXした。


ここは渋谷駅、井の頭線の通路にあるコインロッカー。 

そのロッカーの中の一つから微かな声がした。 

駅員はロッカーの鍵を開け中を見て唖然とした。そこには産着に包まれ
指をくわえた生後間もない女の赤ん坊がいた。 

駅員の通報によりその赤ん坊は警察が保護し、渋谷区内の孤児院に引き取られた。

その子は生後間もないせいもあって里親が早く決まり、同じ渋谷区内の
夫婦に引き取られた。 

月子と命名され、幼児期青年期を愛情たっぷりに育てられた。

月子が二十歳になったある満月の夜、たまたま近くの公園をジョギング
していた月子は突然激しい目眩がしその場に倒れ込んでしまった。

気が付いてみると何やら身体が軽い。 

いや、重力が全く感じられなかった。 

周囲に視線を向けてびっくりした。 

そこは乳白色のブヨブヨとした狭いけど狭さを感じさせない心地良い空間。 

次の瞬間隣から声ではない声がした。 

「ニーナ・ニーナ」

誰かが月子に話しかけてくるのだった。 

「私はニーナでありません。月子・・・」

瞬間、月子にその意識体が重なってきた。 

「月子、あなたはプレアデスから来た宇宙巫女です。二十歳まで地球人に
育てられました。 
今、地球は修羅場と化し我々宇宙の存在も大変心配してます。
あなたにはこの地球を変える一役を生前から約束されていた」 

「??私、そんなこと知りません。地球に返して下さい。それにあなた達、 
宇宙人がやったらどうですか?」 

「我々には直接手を下してはいけないというルールがあって、 
そこで20年前、あなたを地球人として育て上げるために生後一ヶ月の
ニーナを失礼ですがコインロッカーに置いてきたんです。 

そして縁あって月子さんの今のご両親が育ててくれたんです。 
深層意識では御両親とも承諾済みですけどね・・・そしてあなたも・・・」

「チョット待ってよ。 じゃあ、私は両親と血が繋がってないと?・・・」 

「そうです」そのまま月子は気を失ってしまった。 

その時月子はその存在から黄色い石をもらった。その石は宇宙の存在と
会話が出来る能力や、他にも様々な力を秘めていた。 

やがて使命に目覚めた月子は地球を救うため友人を集め、地球人の
意識改革を始めることになったが、困難の連続。

だがそんな日々の中にも心温まる出会いがあり、独特のヒューマンドラマに
仕上がった。

依頼者はFAXを読み快諾した。 

後日、依頼者に一冊の本が届けられた。

ある時、ハマの友人マキコがやってきた。 

「ハマさん久しぶり。最近はどう?何か面白い事あった?」 

「そう簡単に面白い事なんて無いよ・・・」 

マキコが「私も一冊頼もうかな?」 

「あんたの何を書くのよ?」 

「私、最近考えてる事があるの。近い将来、家も家族も全部棄てて
旅に出ようかなって思ってるのね。 
そして長年思ってたんだけど世界中を回って絵を描きたいの。 
世界中の町並みを」 

ハマは驚いたが冷静に語りかけた「それ小説で実現しない?マキコが
これから実際にやるんでなくバーチャルでやってみたらどう?」

「バーチャル?なにそれ?」 

「マキコが実際に体験しないで小説の中だけで経験をするのよ。 
つまり仮想現実を小説にしてしまうの。 

小説の中で色んな体験をしながら旅を重ねるのよ。費用はかけず旅をし
絵も学ぶの。但し仮想でね。 

だからやりたいことをどんどんやるの。男にもなれるし神様にだってなれる。
神として人類に警告を発するなんてのはどう?

創造は自由で制限が無いから何だって出来る。想いのまま・・・どう?」

「ハマ、それ面白そう。自分の夢を追えない環境の人や、夢を一度挫折した
人が再トライして夢を達成するの。たとえ小説の中でも形にしたら何かが
変わるかもしれないよね・・・なんかワクワクする・・・・」 

「マキコ、私も夢が広がったわ。ありがとう。これ商売になるかもしれないね?
なんか喜ばれそう、ワクワクしちゃう。さっそくマキコの夢叶えちゃいましょう。 
当然無料でね・・・発想のお礼」

「OK」 

この企画はみるみる間に広がった。 特に中高年層や主婦に好評だった。
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