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【不思議な黒石-(妖精ミルキー)】13-6

6,リョウゼン

 札幌は山から冷たい風が降りてくる季節になっていた。 

最近シリパの会は異色の新会員さんの話しが多くなされていた。 

その新人さんはリョウゼンといって、若干20才の青年。 

彼はサバン症候群で、一度見たものは忘れずにそのまま絵に描くことが出来た。
その類い希な才能は北海道内では有名でTVに作品が紹介されたりもしていた。 

ひょんなことからここに入会してきた。担当は京子だった。 

「リョウゼンくん、私と一緒に200年前の日本に行ってみない?
どうせなら京都なんてどう?」

「な、なんで?なんで?」 

「200年前の京都はリョウゼンくんの描きたい物が沢山あるような気がするのよ」 

「はいはい、行きましょう」

「ハイは一回でいいの。じゃあ深呼吸を3回してから私の手を握ってね。
目を閉じて・・・リョウゼンくん行くよ!」

ここは200年前の京都の四条大宮だった。

「ここから四条通りを八坂神社に向かってゆっくり移動しようね」 

「はい」 

「リョウゼンくんどう?描いてみたいもの沢山ないですか?」 

「京子ちゃんここの街とっても良いだすね!ゆっくり移動して下さい」 

「リョウゼンくんチョットまって。君、なんか変わった?」 

「実は違う世界に来ると感覚がみんなと同じくなるんですね。
何回トリップしてもこの感覚なんです」

「なるほどね!私たちのいる世界だけがリョウゼンくんの表現が普通と
違うのね。なぜかな?・・・面白い」

京子は続けた「リョウゼンくん何でだと思う?」 

「解らないです。僕のもっと深い部分に何かあるのかも知れません」

「リョウゼンくん、ここが四条河原町よ。昔は呉服屋さんと旅籠が多いのね。
そば屋もあるし時代劇と似てるね。四条大橋の手前左が先斗町で橋を越えて
右が祇園で正面が八坂神社よ。清水寺に行ってみようか?」 

現代とは先斗町も祇園も全然違う。二人は三年坂を通って清水寺に着いた。 

京子が「全てが全然違う。全然観光化されてないよ。すごくシンプルね。
門前に数件茶店があるだけよ。リョウゼンくん、ここ絵になる?」 

「はい、清水の舞台は変わってないです。それと下に広がる町並みの
茶と黒のモノトーンはそれなりに面白いと思います」

「なるほど。絵のセンスは変わってないのね」

「せっかく京都に来たから他も観る?」

「比叡山」 

「じゃあ、手を握って」 

「さすがここはお坊さんばっかりね。天台宗か。大きいお寺ねこれが延暦寺か・・」 

「あのお坊さん、僕だよ・・・」 

「えっ?・・よく見ると目の辺りが似てるわね。何を話してるの?・・
大峯千日回峰行がどうしたって?私解らないわ。リョウゼンくん解る?」 

「解りますが説明が込み入って面倒くさいですよ。聞きますか?」 

「今度ゆっくり聞かせてね。で・・ももしかしてそれでリョウゼンっていう
名前なの?もしそうだとしたら君の親も凄いね」
 
ひととおり京都の街を見て回り二人は現代に戻ってきた。

京子の第一声が「面白い発見があったのよ。ナベ、今晩四人にマチコママの所に
招集掛けてもらえるかい?頼むね」

京子はミルキーと狸小路を歩いた。

「ここに座ってカウンセリングの商売を始めたのがこの仕事の
切っ掛けなのよ。メメともここで出会ったの。私達の原点よ」 

「京子さん久しぶりです」 

狸小路の仲間に「これ鯛焼き差入れ。みんなに配りな・・・はい」 

「この人達も古い仲間なの」京子は一瞬セキロウを思い出した。

居酒屋シリパで久々に5人が揃った。

「今日は急にすみません。実はリョウゼンくんという自閉症の会員さんが居るの。
彼はサバンなの、その事は問題じゃなく、実は二人で200年前の京都へ
一緒に飛んだのね。そしてリョウゼンくんと会話をしたの。 

ところが、なんか私の知ってるリョウゼンと違うのよ。 

なんと、普通に私と会話してるの! 

つまり別世界では障害が無いのよ。当然と言えば当然の事なんだけどね。

で、リョウゼンくんはこの世界だけの表現方法が自閉症だとしたら、
やり方次第では健常者と同じ表現出来ると思ったのね。

リョウゼンだけじゃないわよ。世の中に沢山いるの。

どう思う?やり方によっては潜在意識に働きかけるから
表立ってやらなくても可能性があると思うのね。

ただリョウゼンくんのようなサバンの子はその才能まで無くなってしまうか
どうかが課題なのよ。みんなどう思う?」

京子は一気に語った。

ケンタが「京子ちゃんの言わんとしてることは解る。でもこちら側の見解で
仮にそういう子が健常者になった場合、周りも変わらなくてはならない訳だよね。

もし絵の才能が無くなったら、ごく普通の子に変わるわけだよね。
そうなった時、こちらの対応とか・・」

ママが「う~~ん、確かに会は病院と違うからとっても難しいよね」 

メメが「京子さんの云うように自閉症は肉体的問題が無いから治ると思います。 
ただ、それを良しとする家族の場合はかまわないけど、今が良いと思ってる
家族もいると思うと正直考えちゃいます」

ママが言った「条件付きならどうかしらね?例えば自閉症が発覚してすぐとか、
つまり幼いうちって事よ。
あと、例えば40才くらいの大人の場合、いきなり健常者になったら世の中を
上手く渡っていけずに逆にストレスを感じると思うのね。

数十年分の世の中を健常者の目線で勉強しなきゃいけないから大変なことだと思うの。

それなら元のままが良かったと思ったって遅い気がするのね。どう思うナベちゃん?」

「僕はすぐに結論出せません。現にリョウゼンくんはうちの事務所の会員さんで、
よく知ってるけど会うたびに笑顔で楽しそうなんですよ。
この会が大好きみたいなんです。

彼を健常者にするっていう事は彼本人と周りが変わらなければ成立しないと思います」

「さすがナベちゃんね、それで?」 

「わかりません・・」皆こけた。 

京子が「そうよね。簡単に結論出せる問題じゃないよね。世の中自閉症と言う
障害があっても、すごい発明や発見をする科学者や物理学者がじっさい存在
するんだもの。チョット私、軽率だったかも・・・反省します」 

ママが「でも、リョウゼンくんのケースはとっても役に立ったわ。 
なんか人に言えないけど重要なこと学んだ気がするの。

いい勉強になりました。ありがとう京子ちゃん」

メメは「本当に可能性って無限ですね。ところでミルキーさんは今の
話しどうでしたか?」 

「ミルキーも勉強になったダニ。私達の世界には病気がないから考えた事
ないダニね。私たちは基本が動物と自然と調和に限定されてるダニ。
でも人間って面白いダニ。今度生まれる時は人間も良いかもねダニ」

みんな笑っていた。

ママが「京子ちゃん、それでリョウゼンくんのこと今後どうするの?」 

「親御さんに一度打診するわ。せっかくの可能性だからやり過ごすのも
どうかと思うのよ。結論はお任せね」

シリパの会の壁には数枚の絵が飾ってあった。

すべて京都の古い町並みであった。

リョウゼンくんの事は身内の希望で、今のままで良しとされた。 

だが、シリパの会には日の目を見ない極秘のプロセスが追加された。

やがてリョウゼンは日本画壇から「天才アーティスト」の称号を頂くことになる。  

当のリョウゼンはそんなことはお構いなしでシリパの会にいつもどおり顔を出し、
みんなと楽しいひと時を過していた。
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