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【Amatel】全十夜-7

第七夜「無法猫とユラユラ」

ヤング親方の悲惨な死のあと港は静まりかえっていた。
次期猫衆を納めるのはハマに決定した。

港に祝津の全猫が集合した。

ハマが「今日からわたしがニャン吉親方の後を引き継ぐことにたったニャン。
いつ札幌の猫達が襲撃してくるか解らない、だから周囲の異変には気を
配ってください。

異変を感じた場合は自分だけで判断しないで必ず報告して下さい。

これからはカモメさんも協力して祝津を守っていきます。
空からの目はとっても役に立つニャン。

そこでみんなにお願いがあるの、みんなが食べる食事の中から新鮮な魚を
少しでいいから、カモメさん達に分けてほしいの。人間の手の届かない漁港の
倉庫の上に置いてほしいの」

マユが「共存共栄ってやつね・・・」

「そういうこと。もう、二度とニャン吉親方のようなめに会わせたく
ないの・・・一匹も」

こうしてハマが次期親方となった。


 アマテルはいつも岩の上から遠くを眺め、カモメたちと会話を
楽しんでいた。

マユが岩の上にやってきた。

「アマテルはハマの言うことどう思うにゃ?」

「問題は襲撃を察知してからの対応ね」

「対応って・・・戦うか従うかってこと?」

「そう、阻止するということは戦うってこと。共存を選択した場合、
数の上で札幌猫が有利だから祝津は札幌猫が仕切ることになるよね」

「・・・当然よね・・・」

「戦った場合も向こうが絶対数多いから結果は知れてる」

「・・・ニャ・・・また、アマテルが出て行って追い返すってな
訳にいかないの?」

「無理ね、この前は不意だったから何とかなったけど、今度はそうは
いかないよ・・・」

「でも不思議なんだけど、なんでアマテルを見てみんな逃げてしまったの?」

「うん、あれは簡単・・・あの猫たちの今の自分の気持を見せてあげたの」

「どういこと?」

「人間の使う鏡みたいなもの、私を見た瞬間凄く怖い顔に写ったのよ。
何故なら自分たちの怒りの心が、そのまま私の顔に反映されたからなの。

逆に優しい目で私を見たら凄く優しい顔に見えるの。
でも、今度は私の目を見ないでかかってくると思うよ、
そしたら以前のようなわけにいかないの」

「アマテルが何でそんなこと出来るの?」

「それは今度ゆっくり説明するニャ・・・」

「今度は出来ないのかぁ・・・じゃあ私たちどうなるの?」

「わたしにも解らないニャ」

二匹は遠くに目をやった。


 そのころ札幌であの悪猫達の集会がなされていた。

ゲンが「前回はあのバケ猫が邪魔しに入った・・・
が、今度は問答無用一気にたたみかけるニャ・・・
あいつの目は絶対に見るな。悪魔が取り憑いてるかもしれニャイ・・・
いや、きっと取り憑いてる・・・」

ゲンは、なぜ仲間達や自分まが、一匹のメス猫ごときに尻込みしたのか
理解できないでいた。未だ見たことのない恐ろしい形相の顔が目に浮かぶ。
まったく理解できない。

不安をかき消すためにも、一気に押し込む方法を考えた。

アマテルはそうなるだろうと察知していたので、無事に解決できる方法を
岩の上でいつも考えていた。

マユが「ところで話し変わるけど、以前アマテルが留守していて祝津に
戻った時のことなんだけどね」

「なに?」

「色内神社でユラユラがどうのって云ってなかった?」

「うん、覚えてるよ・・・うっ???ちょっと待って・・そっか、そういう
考えもあるか・・・マユありがとう。
好いヒントになったよ。ちょとわたしと付き合ってくれない・・・
面白いもの見せてあげる・・・」

こうして二匹は色内神社に向かって歩き出した。歩いてる
途中でユラユラの事や、以前あったことを話して聞かせた。

「えっ、そんなことあったの?全然覚えてないけどどうしてなの?」

「マユの防衛本能が働いたのよ。全然理解できないことが起きると頭が
パニックになるの、そして本能的に忘れ去るのよ。マユは死は怖くない?」

「別に怖くないニャ」

「死は必ず来ること知ってるでしょ。でも怖くないということは本能的に
死を遠くに置いてるの。それが持って生まれた防衛本能なの。
だから怖くないの、解る?でも、ニャン吉親方が殺されたとき死に対して
どう考えた?」

「怖かった・・・」

「それは、死が近くに感じたからなの」

マユは首を傾げながら「その防衛本能ってなに?」

「生きる力。生命力と関係してるの」

「ふ~~ん。生命力か・・・・解らないニャイ・・・アマテルなんだか
お母さんの死後変わったね」

「うん、大きく変わったよ・・・大きく・・・」

マユはアマテルのことが遠い存在にに感じた。

二匹は色内神社の鳥居の前に立った。

マユが「なんか不思議と懐かしくかんじる・・・この感覚
なんだろう???」

アマテルは黙って微笑んだ。

マユが「鳥居と札幌の襲撃となんか関係あるの?」

「うん、札幌の連中が小樽に攻め入ってきたら、事前にカモメさんから
連絡が入るようになってるの。そしたら祝津の全猫がこの鳥居から避難
できないかなって思ったの。
カモメから連絡受けて半日の時間猶予があれば、必ず避難できるの。
あとは潮の満ち引き次第」

「それって逃げるっていう意味?」

「そう、多勢に無勢で傷つくより避難した方がよくない?」

「なんでシッポ巻いて逃げるの。」

「勝ち目がない戦をする気なの?相手は無法者よ。手段を選ばないの。
それよりも一回避難して時間をかけて良い方法を練り直すの。
それから戦っても遅くはない。本当は戦いたくないけど・・・」

「アマテルの考えは解ったよ。でもなんで鳥居に来たの?」

「むこうの世界を一度見ておかないと、かってに私たち集団で乗り込んだら、
今度は向こうがパニックおこしちゃう」

二匹はユラユラから入ってむこうの世界の猫たちの了承を取ることに成功した。
但し、滞在期間を三ヶ月にするという条件付だった。

こうして、もとの祝津に戻りハマと他の猫たちに報告した。

ジン平が「それって逃げるって事だろ・・・百年以上続く祝津猫の
プライドに傷つくことになるミャ」

マユが「絶対勝ち目がないのに戦うんですか?雄猫が全滅したら祝津猫の
血が途絶えてしまうかも・・・」

「だから、その思考が負けることを前提に考えてるんだミャ」

マユは「だったら、他の方法を教えて下さい・・・ハマ大将はどう
思いますか?」

「うん、今の段階では多勢に無勢。他に攻略を考えてる暇は無いニャ。
ここはマユとアマテルの案に同意した方が良さそうだニャン。
向こうにいる間に体制を整えて期を待つ。ここで祝津猫の血を絶やす
わけにいかニャイ」

こうしてカモメに見張りをたのみ、まんじりとしない日を過ごすことになった。


 カモメが「お~~い、アマテルさん札幌から三十匹近くの猫が
小樽に入ったよ。あの早さだと一時間でここに着くよ」

「カモメさんありがとう。必ず祝津に戻ってくるからね。素性の悪い猫達に
気をつけてくださいニャ」

こうして祝津の猫は別世界に避難することになった。

札幌猫は一時間後予定通り祝津に入った。

ヨモ猫のジョーが「ゲン大将、猫一匹おりません・・・」

「きっと我々がくることを察知して、どこかに潜んでるかも解れんから
油断するな。ここに五匹残って他の猫は徹底的に祝津のまわりを探せ。
見つけたらここに連れてこいニャ。抵抗する猫はその場で噛み殺せ。
ここは今から我々のもの」


 その頃、祝津の猫達はユラユラを待って鳥居の前に待機していた。

潮が満ちてきた頃ユラユラが出現した。

アマテルが「みんな、このユラユラから入るのよ。マユの後について入って
下さい。私は最後に入ります急いで下さい」

マユに従って順々に入った。最後にアマテルが入ろうとした刹那。
アマテルのシッポを噛んでユラユラに入る事を阻止する何者かがいた。

アマテルが振り返るとそこにいたのは札幌猫のジョーだった。
すぐ数匹の札幌猫が現れた。

「お前え、あん時の猫だな・・・この前は世話になったな。たっぷり
仕返しさせてもらうニャ」

こうしてアマテルだけが取り残されてしまった。

「ゲン大将、一匹見つけました。例の変な猫です」

「チッ、あれか・・・一匹だけか・・・他の猫はどうした?」

「それが・・・消えました・・?」

「消えた?馬鹿かお前は。ジョーを呼べジョーを」

「もうすぐその猫を連れて戻ります・・・」

そこにアマテルを連れてジョーが戻ってきた。

「ゲン大将ただいま帰りました」

アマテルに向かって「おう・・・お前か・・・」ゲンは目を合わせずに言った。

「私はアマテル。何故こんなまねをするの?・・・」

「無用な問答はしニャい。俺たちはここに住むそれだけだ」

「ここは我々祝津猫が昔から住みついている場所。住みたいのならそれなりの
挨拶というものがある。あなた達のやってることは強奪・・・」

「何とでも言え。今日からここは俺たちのもの」

「何故・・・札幌を追われたか解るの?」

アマテルの言葉に取り囲んだ猫たちはお互いの顔を見合わした。

一匹のヨモ猫が仲間に小さい声で「あの猫、どうして我々が札幌を追われた
こと解るの?だれか言ったのかな?」

側にいた猫が「しっ・・・聞こるから黙ってなさい」

アマテルが「言ってあげましょうか」

「うるさい、お前には関係ない黙れ」

「あなた達は最低の礼儀を知らないから、札幌の猫仲間から厄介猫扱い
されたのよ。地方への制圧でもなんでもないの。
そのことを知らない猫への体裁を考えたのよ。そして追われた者同士が
群れをなして、札幌から離れた場所に住もうということになった。
それだけのこと。

あなたの統率力でここまで来たわけじゃない。だからあなたは何時自分が
襲われるか解らない・・・心配で・・・
しまいには一匹で安心して寝ることも出来ないの。まだ言ってほしいの?」

ゲンはシッポの毛がだんだん逆立ってきた「うるさい・・・おい誰かこの
メス猫を噛み殺せ。ジョーお前やれ・・・」

ジョーは下を向いたまま動かない。

からだじゅう傷だらけのヨモ猫ミミが「なら、ゲンさんあんたがやれば・・・」
ゲンの力量を試すか逆らってるような口調だった。

その言葉に苛ついたゲンは威圧的に「ミミ、今、何って言った・・・おい」

「もう一回聞きたい?・・・?自分でやればって言ったんだ。
今度は聞こえたか?えっゲンさんよっ」完全に挑戦的だった。

「まあ、お前のことは後で話しつける・・・ジョーどうなんだ?」

「ゲンさんこの猫なんか・・・不気味なんですけど・・」

前回祝津でアマテルを取り囲んだ数匹の猫は皆頷いた。

「なんだ、なんだ、お前らは・・・じゃあ俺がはなし・・・」

言い終わらぬうちにアマテルに飛びかかった。

その瞬間アマテルは姿を消していた。そして音もなくゲンの後方に
立っていた。

まわりは、目の前でなにが起きてるのか見当がつかない。
ただ瞬間的にアマテルがゲンの攻撃をすり抜け後ろに回っていたという
ことだけ。ハッキリ言って目で追うことが出来なかった。

後ろに回ったアマテルがゲンの耳に囁いた。

「あなたは私と戦うのは無理です。勝ち目ありません。これ以上は
辞めましょう」

ゲンはもう引けなくなっていた。

それを判断したアマテルは、次の矛先をもう一匹のミミに向けた。
瞬間ミミの後ろに回り込んだ。

ミミがとっさに身を伏せ、アマテルの足に牙を向けた。
アマテルは間一髪でかわし、また後ろにまわった。

そしてミミの首の付け根にアマテルが牙をかけた「これ以上やると
食いちぎるわよ、どうするの・・・」

すべてが一瞬の出来事だった。

三匹の猫が三つ巴になった。不思議な静寂の中アマテルが
「争いは嫌い。あなた達がやるというなら相手になるけど。もう解ったでしょ。
あなた達は一度死んだのよ。私が手加減してあげたの今のあなた達に私を
倒せない・・・」

ミミが先にシッポを下げ。そして、ゲンがシッポを下げ爪を引っ込めた。

「解っていただいたようね。さあ、どうします?祝津猫の仲間に入るか。
このまま札幌に退散するか。仲間になる場合はハチというボス猫の下に
なることが絶対条件」

ゲンのもくろみがすべて音を立てて崩れ落ちた。

「みんなと相談させてくれ・・・」

ゲンがみんなのもとに歩み寄り事情を説明した。

一部始終を見ていた仲間の猫は、アマテルの迫力に圧倒されそして従うことを
全員一致で決定した。

「それで決まりね。じゃ私が祝津のみんなを呼んでくるからその辺で待てて。
潮の変わり目には戻るから」


 ハチと仲間達に事情を説明してみんなの意見を仰いだ。

ハチが「アマテルに任せようと思う。我々も祝津を離れるのは辛いし、
戦うこともしたくない。双方が歩み寄って暮らすのが最善だと思う」

意見はまとまった。

双方が歩み寄り、ひと月が経ち祝津漁港の猫たちは前以上に活気づいた。
猫が急に増えたため人間はたくさんの雑魚を与えてくれた。
餌の奪い合いは一度もなく。札幌猫も古くからここに住んでいた仲間ように
無理なく溶け込んでいた。

その光景を見ながら、アマテルは祝津を離れる決意をした。

アマテルが「マユ、わたし旅に出るよ・・・」

「なんで?」

「何かが待ってるような気がするの。今の段階では解らないけど、
何かが私を待ってる気がする。みんなには黙って行くけどごめんね。
マユも元気で・・・」

「アマテル、ありがとう。いつでも戻ってきてね。あんたはここが故郷
なんだから。祝津猫なんだから」

マユは胸が熱くなり、それ以上言葉が出てこなかった。


END
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