スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【HisaeⅡ(ピリカ)】全14話-11

11,「復 讐」

ピリカは無事、大学を卒業し社会人となった。
就職先は札幌市に数店舗あるペット専門の動物病院に決まり春から
獣医としての生活が始まった。

獣医師とはいっても一人で犬や猫をある程度診られるようになるには
個人の資質にもよるが、才能豊かで勤勉な獣医師でも三年間は修行が
必要となり、この間の収入は普通のOLより多少高い程度だった。

ピリカにはとって厳しい環境であっても、動物の病気が癒え退院する時の
飼い主の姿を見るのが心の慰めだった。

 
 「ワンちゃんどうなさいましたか?」

トイプードルが具合悪そうにしていた。

「はい、この三日間ほど食欲が無く食べてもすぐ吐き戻すんです」

「なにか普段と変わったことや食べ慣れないもの物等食べませんでしたか?」

「心当たりありません」

「そうですか・・では診察しますので待合室でお待ち下さい」

ここからがピリカ独特の診察方法である。

「君、どこが痛いの?」

「むかつく。???・・・っていうかあなた話せるの?」

「はい」

「この前、ボール食べた・・・」

「ボール?どんなの?」

「柔らかくて堅いやつ」

「???う~ん解らない。レントゲン撮ろう・・・」

飼い主を呼んで聞いてみる。

「最近、何か異物を飲み込むようなことありませんでしたか?」

「記憶無いです」

「そうですか。では一応レントゲン撮りますね」

レントゲンに映し出されたのは丸い影だった。

「これ見てもらえますか?」

胃の下部に丸い影が確認された。

飼い主が「あっ!スーパーボールかもしれません」

「スーパーボールですか?」

「数日前、私とスマートボールで遊んでいたんです。
途中、見あたらなくなって止めたんですが飲んだんですか?」

「そうらしいですね。院長と相談しますのでお待ち下さい」

飼い主が出て行った。

「あんた、丸いボール食べたでしょ?」

「食べた食べた」

「そのせいよ、お腹が痛いのは」

「取って取って」

「こんなに大きいの簡単に取れません。っていうかよく食べたね?
喉、痛くなかった?」

「痛かった、痛かった」

「なんで食べたの?」

「勝手に入ってきた」

「あっそう・・・何日か入院よ」

「入院ってなんだ?」

「ここにお泊まりするの」

「なんで?」

「なんでも」

院長と話し開腹手術の為一週間程の入院となった。

ピリカの動物と会話が出来る事は関係者には一切秘密であった。
 

ある日、仕事を終え病院から帰る道すがら、ずっと変な気配を感じていた。
その気配は数日間続いた。

自宅マンションはオートロックだけれど建物に入る際には周りに
注意しながら素早く入った。

「どうしよう・・・」ピリカは多少の不安を覚えた。

郵便物には「インチキ獣医」と書かれた封筒が入っていたりと嫌がらせ
が連日続いた。

そんな頃だった。

「どうなさいましたか?」子猫を連れて診察室に男性が入ってきた。

「この子、タマといいます。最近元気が無いんですが何処か
調子が悪いのでしょうか?」

診た感じ、どこも悪そうな雰囲気はなかった。

「念のため体温を計って採血します。待合室でお待ち下さい」

二人っきりになったピリカは猫に「何処か具合悪いの?」

いつものように人間に突然話しかけられた猫は驚いた。

「驚かしてゴメンね。私は動物と話が出来るの怖がらないでね」

「どこも痛くないよ。知らないオバサンさんが勝手に連れて来たんだ」

「そう・・?でも一緒に来たのは男の人よ」

「違うもん・・・」

「まっいいけど」

検査結果、数値には何ら異常がなかった。

再び猫に「どういう事?ねぇ君、本当にどこも痛くないの?」

「どこも、なんともない」

待合室から飼い主と思われる男性を呼び、数値になんの異常も見あたらない
ことを告げた。

その男性は「そうですか・・・おかしいなぁ???なんだか元気が無いよう
なんですけど・・・」

「そうですか。でも白血球の数や他の数値にも異常が見あたらない事ですし、
もし、また何か症状がありましたら、その時におこし下さい」

男性は素直に帰って行った。

その日も仕事を終えたピリカはいつも通りの道順で家路に戻った。

翌早朝早く勤務先から電話が入った。。

「ハイ、立花です」

「ピリカ先生、昨日山口様のタマっていう猫診たでしょ」

「ハイ、どこも悪い数値がなかったので、治療せずに帰ってもらいましたけど。
なにかありました?」

「それが瀕死の重傷で運ばれてきて、手当の甲斐無く死んでしまったんだ」

「えっ・・・データー診てもらえばわかりますが、どこも疾病や数値の
異常は無かったんです。とりあえずこれから病院に行きます。
飼い主さんには解剖の許可をもらって下さい」

電話を切ったピリカはその場に座り込んだ。

なんで?どうして?そんな大事な疾病を見逃してしまったの?
タマさんごめんなさい。泣きながら手を合わせた。


 病院に到着したピリカはすぐに診察室に入った。

「???あれ?猫ちゃんは?」

院長が「飼い主さんが解剖を拒否されて連れて帰ったよ」

「院長、死因は解らないのですか?」

「うん、来た時は瞳孔が開いた状態で心臓マッサージしたが蘇生しなかったよ。
君も、充分注意してくれないかな。どこも悪くないのにここには来ないからね」

「?・・・はい、すいませんでした」

その日は気が晴れないまま仕事を終え病院を出た。

病院から出てすぐだった。後ろからバイクの音がして振り向いた刹那ピリカ
めがけて突進してきたのだった。

避けようと身をかわした瞬間、壁に激突して倒れてしまった。
バイクはそのまま立ち去った。

異常音を聞きつけ病院から院長が出て来た。

「??どうした!立花君、大丈夫か?」

「あっ、院長大丈夫です。申し訳ありません・・・」

ピリカはなんのことかわからず頭が混乱していた。


 その数日後、病院に一通の内容証明が届いた。

内容は、先日死んだタマの飼い主からのもので、タマの死に対してのもの。
誤診による致死という一方的な文面。
損害賠償金として百万円を要求するという内容だった。

院長が「このような事は医療では有り得ること。あとは弁護士に一任し、
自分の仕事を全うしなさい」という言葉をかけてもらった。

診察室に戻るとチワワ犬が診察に来ていた。

気を取り直したピリカは「どうしましたか?」と診察を始めた。

飼い主は「下痢が三日ほど続いてるんです。どうしてですか?」

「はい、すぐ血液検査しますので待合室でお待ち下さい」

二人きりになった。犬に「どこが調子悪いの?」と直接聞いた。

「わからない・・・痛くない」

「下痢してるのに、お腹痛くないの?」

「痛くない・・・」

ピリカの脳裏に先日のタマのことが過ぎった。

「あんた、今の飼い主さんはどの位知ってるの?」

「昨日拾われた。帰りたい、お母さんって帰りたい」

「あんたもしかして拾われたの?」

「違うよ」

「なにが違うの?」

「わかんないよ」

「わからないってどういう事?」

「わからないから早く帰して」

「ハイ、ちょっと待ってね・・・」

そう返答したが・・・どこか腑に落ちないピリカだった。

飼い主に「血液にもレントゲンにも異常が見あたりませんでした。
このまま帰って様子をみるか、入院して様子を診ましょうか?」

「う~~ん、とりあえず帰って様子をみます」

「そうですか」

チワワが帰った後、ピリカは院長室に向った。

「院長、今日もタマの時のようにどこも悪くないペットが受診に来たんです。
私、なにか腑に落ちないんですが・・・」

「そうか、チョット受付の青ちゃん呼んでくれるかな?」
院長も少し気になった。

「青ちゃん、忙しいところすまないね。先日のタマと今日のチワワ、
医師の指名あったかい?」

「はい、立花先生って指名でした」

「そうかい、わかった。ありがとう」

「立花君、これは何かあるかもしれないよ。君に心当たりは無いのかね?」

「直接関係してるかどうかわかりませんんけど・・・最近ストーカーっぽい
影が感じられます」

「そういえば、先日のバイクの件もあったね・・・」

「あっ、ハイ」

「本当に心当たり無いのかね?」

「私、お付き合いしてる人いませんし告白されたこともありません」

「そっか・・・とりあえずしばらくは用心しておこうね」


 ピリカは嫌な予感を感じながらその日の勤務を終えた。帰りは四方に
気を配り真っ直ぐ自宅に戻った。

翌朝早く携帯が鳴った。院長からだった。

「立花君おはよう。例の犬が重傷で運ばれてきたよ。間違いなく何らかの
裏があると思う。とりあえず君は今、病院に来なくて良いから。
あとで通常通り出勤してほしい。気をつけてくださいよ・・・」

「はい、ありがとうございます」

「ルーどういうことなの?・・・教えて・・・」どうした訳かなんの
返答も返ってこない。

ピリカは四方に気を配りながら家を出た。

その時だった。ピリカの影を感じて隠れたと思われる人影があった。
ピリカは勇気を出してその影に近づいた。

どことなく女性のような体つきを感じた。

「チョット待って下さい」意を決して声を掛けた。

その影は振り返りもせず走り出した。

「チョット待って下さい・・・止まって下さい」

ピリカの呼びかけを無視して走り続けた。ピリカも全力で走りその影の前に
走り寄った。

「待って下さい・・・」振り返って見たその顔は中年の婦人。

ピリカは息を整えて言った「すいませんが、私になにか用事あるんですか?」

「別に・・・誰あんた?」

「だって、ここんところ私を付け回してるじゃありませんか」

「なんで私があなたを付け回すのよ?」

ピリカは内心、そう云われればそうだけど・・・それ以上の言葉が出ない。
この人が私を付け回してる事は確かだ・・・でも、なんで?証拠もない・・・

「すいませんでした。私の勘違いでした。申し訳ありません」

なんで、なんで、私が謝るの・・・・・やるせない気持ちで涙が出て来た。

その時、携帯が鳴った。院長からだった。

「ハイ、立花です」

「犬が死んだよ。やはり解剖を拒否して帰って行った。君は今、どの辺ですか?」

「これから地下鉄に乗るところです」

「そっか、気をつけるんだよ・・・」

「ハイ・・・・」


 病院に着いてドアを開けた。

「おはようございます」

受付の青ちゃんが「立花先生おはようございます。院長が来るようにって」

「ハイ」

院長室のドアをノックして「立花です」

「どうぞ」

「おはようございます」

「おはよう。さっき話したように犬が死んだんだけど原因が解らないまま
引き取られた。タマの時と同じだよ。

青ちゃんの証言のように、いずれも君が指名されたんだ。
たぶんなにか関係してると思う。

とりあえず様子を見るから、君はしばらく山田先生の助手をしてほしい」        
「ハイわかりました。それと今朝、家を出たところで女の人に尾行されまして、
私が気が付いたのを察知して逃げたんです。

なんとか先回りをして話しかけたんですけど、私のことなんか知らないって
云うんです。私もなんの証拠もないのでつい謝ってしまったんですけど・・・
間違いなく付け回されてました・・・」

「そのご婦人に面識はないのかい?」

「はい、まったく思い当たりません」

「そっか、思い出したら私に報告して下さい。じゃぁ山田先生の助手お願いしますよ」

「はい、失礼します」

 ピリカはあの女の人の顔をなんとか思い出そうとしていた。

それから数日が過ぎたがストーカーの影も無く、これという変化も無かった。

そんな時、地下鉄のホームで手を振っている女性の姿があった。

「ピリカちゃん元気してた~~」声の主はピリカがアルバイトしていた
ススキノのRONという店のホステスの理恵だった。

「あっ理恵さんお久しぶりです。これからお勤めですか?」

「そう、これからなの、わたし店移ったのよ。今度、飲みに来てね」

理恵から名刺をもらい話しそこそこに別れた。

理恵さんか・・・あれから七年になるけどまだススキノで
頑張ってるんだ・・・う?・・・あれ?

ピリカは何か気にかかった。

自宅に戻ったピリカは真っ先にパソコンにむかいキーボードを叩いた。

札幌市Fさん・・・検索と・・・出て来た。

写真をクリックし、拡大してみた。

うそっ!!・・・このオバサンだったの?

なんで、今頃になって??どうして?思案にくれた。

もし院長に事情を話したら私が今まで隠してきた能力が表に出るし・・・
そうしたら病院にいづらくなる。

だって院長より動物の心がわかるなんて院長も立つ瀬無いよね。

今度の休み倶知安に帰って相談しよ。

なんで今頃になって・・・あのFさんが私を・・・気が晴れない日が数日続いた。
 

 久々の帰省・・・でも足が重いよ~~。

「ユメ、ミルキーただいま~元気にしてた?」

「ピリカ姉ちゃんお帰り」

「ユメただいま、ミルキーの面倒みてる?」

「うん、とっても素直で良い子だよ」

「ユメ、あんたミルキーのお母さんみたいだね」

「そうだよ、ちゃんとおっぱいも出るもん」

「そっかい、それは動物にはよくあることなんだよ。母親のようにしてると
お乳が出るんだよ」

「わ~~い! 私、ミルキーのお母さんだ・・・」

「ガンバってね!ユメ母さん。で、私のお母さんは?」

「出かけた」

「お父さんは?」

「一緒」

ピリカは母親に電話をした。

「私・・・今どこ?・・・そう、わかった。待ってる」

「今、帰るって。ところでミルキー大きくなったね。この家どうですか?」

「ピリカ姉ちゃん・・・私がこの家に来てから、もう二回も雪降ったよ。
なんで新入りみたいなこと言うの?ポン」

「あっ、ごめんね。ユメがお乳が出るって言うから・・そうだよね。
おかしいよね。それにしてもユメは何で、今でもお乳あげてるの?」

「だってミルキーが欲しがるから・・・」

ピリカが「ミルキー、あんたまだお乳飲んでるのかい?」

「はい、飲んでるポン」

「もう止めなさい」

「なんで?ポン」

「ユメのエネルギーがだんだん無くなって倒れちゃうからよ」

「ユメ倒れたら嫌だポン」

「そう、だからもう止めなさいね」

「ハイ・・・ポン」

「あんた、話し終わった後の・・・ポンはどんな意味があるの?」

「???」ミルキーは理解出来ないでいた。

ユメが「お姉ちゃん、ミルキーはわかってないのよ、自分の癖を」
ピリカとユメは笑った。そして母親が帰宅した。

「ただいま~~~」

「あっお母さんだ!ポン」ミルキーが走った。

「お帰り。今日はどうしたんだい?突然帰ってきて」

「うん、お父さんとお母さんに話し聞いて貰おうと思って・・・」


その夜、食事をしながら三人は話した。

学生の頃、ススキノでアルバイトした事以外、一通りの経緯をピリカは話した。

父親が口を開いた「そっか、逆恨みか。事が事だけに難しい問題だね」

母は「院長にあんたの能力、知れたらマズイのかい?」

「だって院長と私の見解が違ったら院長の権威が崩れるでしょ?
いつも院長の診断が正しいとは限らないし。

今回だってタマも犬もどこも痛くないって云うの。でも、もし院長だったら
何らかの病名を付けると思うの」

「なんで院長はわからないって言えないのさ?」

「動物病院という所は動物が調子悪いから高いお金を払って受診するの。
人間のように健康診断だけでは滅多にこないの。保険も無いのに。

つまり、犬猫が病院に来る場合は何らかの病気なの。だから病名を付けるの。
わからない場合はストレスのせいにする場合もあるけど」

「なんか、人間の医者みたいだね」母が言った。

父親が「ピリカ、お前はどうしたいと思ってる?」

「うん、だから悩んでるの。辞めるか続けるか・・・」

母親が「続けるにしても病院に迷惑掛からないのかい?」

「そう、もしこれがまだまだ続くようなら、病院の存続に係わると思う。
今の世の中、ネット配信なんてされたら一気に広がるから、あんな病院なんて
あっという間に潰れちゃうかも・・・」

「辞めちゃいなさい。そして倶知安に戻って来なさい。倶知安だって獣医の
仕事はいっぱいあるわよ」

母らしいコメントだと思った。

「でも、ここで辞めたら私が負けを認めたような気がするし、そんなことで
負けるのシャクなの・・・何よりも、私への復讐のために死んだ犬と猫に
申し訳ないの」ピリカの目から涙が落ちていた。

「ピリカ姉ちゃん・・・どったの?ポン」ミルキーが心配そうに言った。

「そっか、これ以上病院に迷惑掛けたくないなら、ちゃんと院長と話しをして
結論を出しなさい。父さんと母さんはお前の味方だから、お前がどっちの道を
選んでも応援するよ。なぁ、母さん」

「うん、ピリカお前の好きにしなさい。お前の人生なんだから」

「うん、ありがとう。一晩考えて結論出すね」


翌朝早くピリカは起きてきた「お母さんおはよう」

「はい、おはよう」

「私、辞める事にしたから」

「そうかい。わかったよ」

「但し、このままでは辞めないから」

「どういう事?」

「その嫌がらせをした相手に謝罪させるの」

「おやり!ガツンとやっておやり!」

「ねぇ、ピリカ姉ちゃん、昨日からどうした・・・ポン?」

「ごめんねミルキー、心配かけて・・・でもこれ人間界の話しだから
説明するの難しいんだ」

「ポン???」


ピリカは辞表を持って院長室を訪ねた。

「院長、短い間でしたがお世話になりました。今月で退職させてください」

「例の件の事かね?あんな事で君が辞めなくてもいいと思うけど?
僕はそんなちっぽけな人間じゃないよ」

「はい、ありがとうございます。ですが、やはり辞めさせていただきます。
私が居ることでこの病院に迷惑が掛かるなら、まずは辞めるべきだと考えました。
でも、個人的にその人達とはしっかり向き合いたいと考えております。
決着が着いたら、またここでお世話になるかどうか相談させて下さい」

ピリカの決意の固さを感じた院長は辞表を受け取った。

ピリカは病院を去る時呟いた。

「ごめんね、タマとワンちゃんごめんね私のために・・・」


Hisaeは手を止めた。まずはこんなとこかな。
チョット可哀想なことしたかな?・・・でもこれが小説の醍醐味よね。

ピリカ耐えなさいね。今まで順調だったんだから・・・
たとえ小説の上でも、それが人生よ。さっ、風呂入って屁こいて寝よっと。

Hisaeは瞑想して眠りに入った。

END
関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。