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【Sigemi&Ayami】全2話

1.Sigemi

 観光の町小樽に中高校生に人気の小物店があった。
店の名は「スピリチュアルショップ・TG」

メイン通りから少し奥に入った間口3.6mほどの小さな雑貨店、
商品はスピリチュアルに関する物なら一通り扱っていた。

水晶・占い各種カード・仏像・ロザリオ・本・お香など手ごろな価格が
修学旅行生には購入しやすく設定していたので、それなりに繁盛していた。

「いらっしゃいませ。ご自由に見て下さい」

今日も修学旅行で小樽に来た女子生徒がやってきた。

「あの~う、こちらでお客の相性にあった水晶を選んでもらえると
聞いて来たんですけど」

「はい、貴女ですか?」

「いえ、彼なんですけど・・・」

「結構ですよ。彼の写真見せて下さい」

「どうぞ、彼です」

「ハイ、解りました」

店主のテ~ジはその写真に手をかざし眼をとじた。

次の瞬間「これですね」と言いながらひとつの水晶を手にとりそっと渡した。

「これが彼のエナジーとあなたのエナジーの調和を司る水晶ですね。
あなたも購入されるとより良い効果が予想されるけどね」

「じゃあ、私のも選んで下さい」

「はい、ありがとうございます。ひとつ1500円ですけどふたつだと
2500円になります」

他の生徒も「あの~~、私もお願いします」その娘も携帯の写真を見せた。

ひととおり客が帰った後、昨日から店で働くことになった
パートのシゲミが「テ~ジ店長さん、凄いですね・・私、そんな能力
全然ありません」

「僕もそんな能力ないよ」

「えっ???でもさっき・・・」

(なにこのオヤジ・・・インチキか?詐欺か?)思った。

「あっ、あれね。あれデタラメだよ・・・」

シゲミは我が耳を疑った。

「嘘なんですか?」

「嘘じゃないよ、デタラメだよ」

「どう違うんですか?」

「嘘は故意的につくもの。デタラメはかも知れないということ。
もしかしたら当たってるかも知れないでしょが?

鰯の頭も信心からって言うでしょう?当のお客も半信半疑だからいいの。
今までこの売り方でクレーム無いし」

シゲミはバイト先、間違ったと後悔した。

その日の夕方、同じように水晶を求める学生の団体が来た。

シゲミが応対していた。

「すみません」と云いながら携帯から2枚の写真を見せた。

シゲミは躊躇無く手のひらを水晶にかざし眼を閉じた。
順応しやすい性格である。

テ~ジはしっかりとその様子を見ていた。


 今日も店が開いた。

「いらっしゃいませ~~。あなたに合った石探しませんか~~?
当店がお手伝いさせてもらいますよ~~」

テ~ジが指示していないのに勝手に呼び込みをやってるシゲミがいた。

テ~ジはシゲミに天性の素質を感じた。久々のヒット!・・と思った。

「オネエさん、すいません」

「はい、なんですか?」

「あの~、手相占いの初心者にいい本ありませんか?」

「この辺の本が初心者にお勧めですよ」

「じゃあ、これ下さい」

客が帰った後テ~ジが聞いた。

「手相占い詳しいのかい?」

「いいえ、知りません」

「だってさっき客に・・・」

「あっ、あれはデ・タ・ラ・メです」

テ~ジはまたまたシゲミに天性の才能を感じた。

ある時、店に手紙が届いた。

「先日、水晶をふたつ購入した学生ですが、おかげさまで彼との間が
深まりました。水晶の効果に驚いています。ありがとうございました」

テ~ジはシゲミに手紙を渡した。

「デタラメとはこういう事を云うんだっよ・・・」

訳の解らないことを力説した。

「お姉さん、私のお母さんが体調を崩して入院してるんです。
お守りにどれか効く石ありませんか?」

「ありますよ」

なにも考えずシゲミは即答した。

「このムラサキ水晶なんか、病気が癒えそうですよ」

「じゃぁ、これ下さい」

「はい、2000円です」

客が帰ってから頃合いを計りテ~ジは「大事なこと云うの忘れてたけど、
身体に関することはコメントしないでね。当事者にとっては大事なことなんだ。
責任が負えないコメントはくれぐれも避けてね・・・」

「は~~い」シゲミは案外軽かった。

それからひと月後、店に一通の手紙が届いた。

「ひと月程前、母の病気が癒えるようにと紫水晶を購入した女子学生です。

あの石を選んでいただいた綺麗なお姉さん、ありがとうございました。

お姉さんに選んでいただいた石を母親に渡してから体調が日に日に良くなり、
先日無事退院できました。

後から聞かされたんですけど、母親は癌だったようです。母親の回復を医者も
不思議だと云ってたそうです。それだけではありません。

昨日、私が学校行くのに家を出て直後、急に紫水晶が気になったので家に戻り、
母親から石を借りて家を出たんです。

当然、いつも乗るバスに間に合わず、ひとバス遅れて乗りました。
そして次のバス停の前で、悲惨な光景を目撃しました。

私が乗る予定だったバスがダンプカーと激突し横転してたんです。

あのバスに乗ってたら、たぶん災難に遭ってたと思います。

私が無事だったのは、この紫水晶のおかげだと思っております。
この石を勧めてくれたお姉さんに感謝します。 

スピリチュアルショップ・TGさんの素敵なお姉様へ  山口澪」

それを読んだシゲミは「あっそう・・・良かったね」と、そのまま手紙を
丸めゴミ箱に棄ててしまった。

シゲミにはどうでもいいことだった。

それを物陰から見ていたテ~ジは思った。

この女ただ者でない・・・。

「今日から世の中4連休。忙しくなるから頼むねシゲミちゃん」

(シゲミは4連休か・・・めんどくせ~~)と心で思っていた。

「いらっしゃいませ~~あなたの意識を波動チューニングしませんか~~」

テ~ジは思った(この娘は、どこでそんな言葉、覚えてきたんだ?
この仕事が天職のようだ・・久々のホームランか?)盆と正月が一度に
きたようだと思った。

3人の女子高生が入ってきた。

「いらっしゃいませ」

3人は店内を見渡していた。

1人が「このタロットって本当に当たるの~~?」

シゲミが答えた「当然当たりますよ、タロットの歴史は古いですから。
今でも存在するって云うことは当たるからだと思いませんか?」

見本用のカードを手にしたシゲミは「1回やってみます?」

「えっ、いいですか?」

何処からかタロット用のフェルトを取り出し、テーブルに広げた。

「で、なにを占いたいの?」

「私は大学受験と看護師と進路を迷ってます。私に向いてるのはどちらか、
タロットで解りますか?」

側で聞いていたテ~ジはシゲミでもタロットは無理だろうと思った。

「解りますよ」シゲミは簡単に云った。

カードをシャッフルして作業に入った。

一枚のカードを取り出し「はい、このカードがあなたの未来を暗示してるのよ。
よくみるのよ。いくよ・・・」

シゲミはこれ見よがしにカードを開いた。

「はい、結論から言うと看護師ね。あなたは勉強はあまり好きでない。
あなたの持って生まれた武器はズバリ!母性愛ね。看護師は天職かもね。
考えた事無い?」

「あります、あります」

「ありますは1回でいいの」

「はい・・・」

みんな爆笑すると同時に驚いていた。

残り二人も占ってもらった。

「いいかい、タロットは誰でも出来るの。カードに大まかな意味が
あるからまずそれを覚えること。それからそれを元にインスピレーションを
働かせるの。

世の中には偶然がないの。どんな占いにも偶然は無い。ただし、同じ内容で
何回も引かないこと。たとえそれが意に反するカードでもね。

どうしても再占いしたい場合は半年後にすること。あなた達にも簡単に
できるわよ・・・どう、買わない?

説明ガイド本が付いて、たったの3500円。3セットまとめたら
300円引きの3200円。どうですか・・・?」

「頂きます」3人は口を揃えて言った。

「ありがとうございました~~」

3人が帰った後、テ~ジがやって来た。

「タロット出来るの?」

「出来ない」

「えっ・・・#%$#”%・・・だって、彼女たちに???」

「あれ全部デタラメです。わたし一度だけ姉が持ってたタロットの本
読んだことあってたまたまそのカードの内容を覚えてたの。

でも、3人目の髪の長い娘のカードは解らないから直感です。
テ~ジさんも占いましょうか?」

「・・・いや、僕はいい・・・」

テ~ジはこの女、完全に俺を上回ってると思った。


「いらっしゃいませ~。なにしに来たの?!」シゲミはその客を見て
急に言葉を荒げた。

その客は「あんた、お客にその態度はどういうことよ?」

「ひやかしはお断りしま~~す」

「バッカじゃないの?・・小樽の客はお方が観光客。観光客の多くは
冷やかしよ。店員ならそのくらいよく覚えておきなね。
偉そうに・・・なにがひやかしよ。ひやかしみたいな顔してさ・・ふん」

「ひやかしみたいな顔ってどんな顔よ?」

「そんな顔よ・・・バッカじゃねぇの?」

テ~ジがやってきた。

「どうもすみません???あれ?・・プッ・・・」

客の顔を見た瞬間吹き出した。二人のシゲミが言い合いしていたからだった。

客のシゲミが言った「お宅が店主のテ~ジさんですか?いつもこのお馬鹿な
妹がお世話になっております。双子の姉のアヤミです。どうも・・・」

「・・・そうですか、お姉さんですか?シゲミさんにはお世話になってます。
私が店主のテージです。初めまして」

「あなたがデタラメに石を売ってらっしゃるテ~ジさんですか・・・?」

テ~ジはシゲミの顔を睨んだ。

「で、今日はなに?」シゲミが言った。

「用事でそこまで来たから寄ってみたの」

「買わないなら邪魔だから帰ってくれますか・・・?」

「なによ、水晶でもと思ってるのにその態度は。テ~ジさん、私に合った
石ありますか?」

「勘弁して下さいよ・・・」テ~ジが頭をかきながら言った。

それを見ていたシゲミが言った「お客様、私が選んであげましょうか?」

「あなたに解るの?」

「商売ですから・・・」

無作為に水晶を選び「これなんてピッタリですよ、失恋の痛みを
忘れさせてくれますよ」

「な~に~!てめ~~シゲミ・・・こら!」

アヤミは彼に振られたばかりだった。

「まあまあ冷静に・・二人とも。喧嘩は家に帰ってからご自由に」

「この店、気分悪いから帰る・・・」アヤミはそう言い残して店を出た。

「テ~ジさん、塩蒔いて!塩!」

「シゲミちゃん、折角様子を見に来てくれたんだからさ・・」

「すいませんでした・・・」

お客が入ってきた。

「いらっしゃいませ~~」満面の笑みを浮かばせたシゲミだった。

「女は怖い・・・」テ~ジは思った。

仕事を終えシゲミは自宅に帰った「ただいま~~!」

アヤミが近寄ってきた。

「お帰り~~!楽しかったねぇ~~!あの店主の顔見た?」

「見た見た。あのビックリした顔。面白かった~~最高!」

母親の京子が近寄ってきた「あんた達、またやったのね!で、どうだったの?
母さんにも教えてちょうだ~~い」

「ガ・ハ・ハ・ハ・」3人の笑い声が家中に響いた。   


「おはようございます」

「おはようシゲミちゃん。昨日帰ってからまたお姉ちゃんと喧嘩したのかい?」

「いえ、普通ですけど・・・」

「あっそう・・・」昨日のあれはなに?とテージは思った。

「いらっしゃいませ~~」

今日もショップTGの1日が始まった。

「店長、水晶残り少なくなって来ましたよ」

シゲミが入社してから水晶とタロットカードは以前の3倍売れていた。

今ではそのふたつを目当ての客が増えた。

中には小樽に来られない友達の分まで購入する客も多くいた。

小樽のショップTGの水晶とタロットが中高生の女子の間で人気があった。

特にシゲミという店員が触れた水晶はご利益があると噂された。


「ごめんください」

「いらっしゃいませ」テ~ジが接客した。

「 私、ショッピング北海道編集記者の小黒タカコと申します。
実はこちらの店員さんの触れた水晶になにか不思議なパワーが
秘められていると聞いて取材に来ました。

どなたか責任者の方にお話しを聞きたいのですが?」

「僕が店主でオーナーの村井と申します。そんな話し聞いたこと
ありませんけど?」マズイのが来たと思った。

「えっ?今、若い子の間では有名ですよ。小樽のパワースポット・・
と言ってる人もいるんですよ」

「いや~僕は初めて聞きましたけど?・・・」

「こちらにシゲミさんという従業員の方おられますよね?」

「はい、彼女ですけど」テ~ジはシゲミを指さした。

「オーナーさん、彼女にチョットお話し聞いてもいいですか?」

「彼女に聞かないと解りませんし、店内は狭いので他のお客さんに迷惑かと」

「じゃあスタッフは表で待ってますから、私がここで彼女に取材の許可を
取ってもかまいませんか?」

「・・・あっ、どうぞ」

心の中で(シゲミ、拒否しろ~~)と念じていた。

「あのう、シゲミさん。取材の件でお時間宜しいでしょうか?
店長さんの許可はもらってますけど」

「店長はなんて?」

「シゲミさんが許可したらかまわないと言われました」

「そうですか。じゃあ、手短にどうぞ」

「では、表で店をバックに写真を一枚撮って、それから簡単な
インタビューお願いします」

(あいつインタビュー受けやがった・・変なこと言うなよ!)
テ~ジは頭の中で祈った。

「では質問しますから答えて下さい」

「どうぞ」

「この店は中高生の間で有名になってることはご存じですか?」

「いいえ、知りません」

「小樽のスピリチュアルショップ・TGのシゲミさんはお客の顔と
バイブレーションを視て、その客に相応しい水晶や小物を選んでくれるって。

そして選んでくれた水晶に特別のパワーがあるという評判ですけど・・・
どう思われますか?」

「そうですか、そんな噂が立ってるんですか・・・知りませんでした。
私がやってることは、宝石や服をお奨めするのと同じですけど。あなた、
宝石や服を買いに行きますか?」

「ハイ行きます」

「似たような指輪があった時、どれにしようかと悩んでいるところに、
それを察知した店員さんが来て、こちらの方がお似合いですよって
話しかけてきたら?

私のやってることはただそれだけのことです。
あとは、買った人が勝手に解釈してるだけだと思います。

そんな効果のある石があったら私が買います。

そして高く売りつけますよ。そんな中高生の噂で小樽までわざわざ
ご苦労さまでした。以上」

シゲミは何事もなかったようにそのまま店に入っていった。

小黒タカコが視線を落として「今日は取材になりませんね、
撤収しましょう。彼女の云うとおりよね。
噂に惑わされるとこだったわよ、まったく・・撤収、撤収」

難を逃れた店主テ~ジは、シゲミは本当に素晴らしいと思った。

敵に回したら怖いタイプとは彼女のことか・・・

石の売り場ではシゲミが「オネェちゃん、この石の効果知ってる?
普通の水晶と少し違うのよ・・・私が選んであげる。
今も札幌の雑誌社が噂を聞きつけ、取材に来たとこなのよ」

END
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