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【Mari】全8話-2


2「私はマリ、パートだけど何か?」

 小樽はアジアからの観光客や修学旅行生でいつもにぎわっていた。

観光の目玉にガラスを販売する店や、オルゴールを扱う店も多く
マリは学校が終り夕方の5時から、そんな観光みやげの店で不定期に
週3回ほどパートをしていた。

観光みやげといっても水晶やタロットカードなどを扱う
「スピリチュアルショップTG」という店で販売の助手をしていた。

店ではシゲミとアヤミという双子の先輩店員がマリの指導役。

シゲミが「マリちゃんは顔が怖いから何時も笑顔でいなね。なんでも
『ハ~~イ』って言ってりゃ客は良い気分になるから。

適当にやってりゃいいのよ。買うものは買うし、買わないものはいくら
安くったって買わないから適当でいいからね。適当で」

それを聞いていた店主のテイジが「シゲミちゃんさあ、ちゃんと
教えてね、ちゃんと。最初が肝心だから。そうしないとシゲミちゃんや
アヤミちゃんのように僕が舐められるから・・・」

「店長、私達舐めてませんけど・・・小バカにはするけど」

マリは、このシゲミ先輩はひと味違うと思った。どことなく自分と同じ
感覚がして親近感を感じた。

入社初日から客引きをさせられた。

「いらっしゃいませ~~~」

見ていたシゲミが「声、小さい」

「あっハイ・・・いらっしゃいませ~~~」

「まだ小さいよ。チョット私の見てな」

そう言いながらシゲミは店頭に立ち「いらっしゃい。あなたにあった
水晶を選びますよ。開運・恋愛成就・家内安全・運気上昇いかがですか?」

マリが「シゲミさん、いつもそんないい回しするんですか?」

「するけど?なんで?」

「あっ、いやいいです」

こうしてマリのアルバイトは始まった。

働いて数日たった頃「マリ姉いる??」

例の3人組がひやかしにショップを訪れた。

シゲミが「なに?マリちゃんの友達かい?」

マリが罰悪そうに「そうです・・・あいつら私をひやかしに来たんす」

「そう・・・。まあ、見てなよ」

シゲミが不気味な笑みを浮かべて3人に近づいていった。

「あんた達マリちゃんのお友達かい?」

「はいそうで~~す」

「まあ、入りなよ。見ていったら?どうぞ。気に入ったのがあったら
ハゲ店長に内緒で超安く売ってあげるからね。なんでもいいなよ」

「は~~い」3人は笑いながら店内に入ってきた。

「そこの赤い髪のこ、あんた。この水晶手に持ってごらん」

そういって水晶を手に握らせた「う~~んこっちかな?」

違う水晶を握らせた「うん、これだね。これがピッタリだ」

「なにがですか?」

「相性だよ。あんたとこの水晶のバイブレーションが合うかどうか視てるのさ」

「相性なんてあるんですか?」

「当然だよ。なんだ、あんた知らなかったのかい?
なんにでも相性というのがあって、バイブレーションがあった時は
相乗効果が生まれてなんでも思い通りになりやすいのよ。
そうい意味で昔から水晶は重宝されてるのよ。これどう?・・・」

「相性ですか?」

「そうよ、特に男と女は相性が肝心なんだ。よく覚えておきなね」

「これください」

「いいよ、他の二人は?」

「私達も視てください」

「よし、3人まとめたら超安くするよ。いいかい・・・
あそこのハゲ店長には内緒だよ。ばれたらまた毛が抜けるから」

3人は店長の頭を眺めて・・・にやけた。

「その2人も手に持ってみてよ、私が視てあげる」

結局3人はシゲミに水晶を買わされ帰って行った。

マリが「シゲミさんありがとうございました」

「何が?」

「いや、安く売っていただいて」

「いいかい、ああやって売るのは悪い例だよ」

「なんで悪い例なんですか?みんな喜んで帰りましたけど」

「こんな透明な石ころでいいことあるわけ無いじゃん」

「えっ???今言ったこと全部デタラメなんですか?」

「それは解らないね。そこのハガキ見てごらん」

段ボールには沢山の手紙やハガキが詰められていた。

「あとで何通か読んでごらん。願い事が成就したっていうお礼の手紙だよ。
それ全部がそう」

「やっぱり何らかのパワーがあるのでは?」

「それは絶対無い!売ってる私が言うんだから間違いない」

「そうですか。で、さっき言ってた良い売り方とはどんな?」

「自分達で選ばすの。そうしたらクレームは無いよ」

「自分で?」

「そう、途中までは同じやり方なんだけど、最後に付け加えるの。
『私はそう感じたんだけどお客様はどう感じます?』ってね。

そして最後の選択はお客に決めてもらう。いわば、客を誘導しながら
わたしの売り方に逃げ道を作ったの。
これ、あのハゲ店長の直伝。ああみえても、あの中途半端ハゲ、
けっこうしたたかなんだ・・・」

マリは、やっぱ世間は学生社会と違い面白い・・と感心した。

「いらっしゃいませ~~。あなたと相性のいい水晶いかがですか?
お手伝いしますよ~~」呼び込みをするマリの姿があった。

その姿を見てシゲミは微笑みながら頷いていた。


 翌朝学校で「マリおはよう」花岡の声だった。

「先生おはようございま~~~す」

「今日の放課後、部室に来てくれないかな?」

「いいですけど・・・なんすか?」

「うん、その時話すよ」

放課後マリは部室に行った。

「おう、忙しいところ悪いなっ。実はマリに先生聞きたいことがあるんだ」

「改まって、なんすか?」

「マリが最近不良の女子高生3人と付き合ってるという噂、先生耳にした
けど本当か?違ったらごめんな・・・」

「あ~~あいつらか・・・本当だけど・・・なんで?」

「お前大丈夫なのか?不良と付き合って」

「あいつらが弟子にしてくれって言うから、しかたなく付き
合ってるんだけど・・私、あいつらを更正させてる最中なんだ」

「マリの言ってること先生解らないから、解るように順を追って
説明してくれるかな?」

マリは事の成り行きを話して聞かせた。

「本当か?先生お前のこと信じていいのか?」

「私、ジッタに嘘ついたことありませんけど・・・」

「そうだよな・・・先生信じるよ」

「それにしても何処から聞いたの?そんな噂」

「うん、3年生が話してるの聞いたんだ」

「誰だ?そいつ・・・」

「ほらっ、お前はすぐそうなるから噂に信憑性が出るんだ。
お前を知ってる人は、マリならやりかねないって・・・」

「ちっ・・・くだらん学校だな・・・」

「まぁそう言うなって。みんな心配してるんだから」

「分かったよ。先生もそんな噂、否定しておいてよ。頼むよ・・・鼻をカジッタ先生。
それよりか早く嫁さん探しなよ、まだ頭の毛が残ってるうちに・・・」

「お前、俺の嫁さんのこと心配してくれてたのか?」

「そうだよ、もし嫁の来てが無かったら私が嫁になってやっても
いいかなって考えてたんだ・・・どう?」

「えっ?・・・マリお前・・俺のことそんな風に思ってたのか?」

「そんな風にって・・・どんな風にさ?」

「いや・・その・・・好きとか嫌いとかそんな・・・」

「なに?ジッタ、お前ばっかじゃねえの・・・冗談も分からねえのか? 
だから毛が少なくなるんだぞ」

「でも先生嬉しいよ・・・」

「死ね!ハゲジッタ!ば~~か・・・」


「いらっしゃいませ~~あなたの・・・」

マリは店員のパートがすっかり板についてきた。

例の3人がまた現われた。

赤毛が「マリ姉働いてる?」

「おう、ちょうど良かった。3人に話しあったんだ」

「なんすか?」

「あんたらその格好変えなよ。私、先生に呼び出されてさ
『マリお前最近3人の不良と付き合ってるのか?』って言われたんだ。

なにそれ?って聞いたら『噂が出てるぞ』って。馬鹿じゃねぇのって
言い返したけどよく考えたらあんたらの格好はどう見てもヤンキーだよ。
もう、その格好やめなよ。

頭も黒くして相手を下から上に舐めるように見る癖も駄目。
分かった?・・・その格好は禁止だよ。それが嫌なら縁を切るから」

「マリ姉がそう言うなら・・・わかった・・・」

3人はすごすごと退散した。

それから数日が経ちマリのもとにまた3人が現われた。

髪を黒く染めスカート丈も普通になった姿を見たマリが「へ~~あんたら
可愛くなったね・・・そのほうがずっといいよ・・・」

「マリ姉、なんか・・・恥ずかしいよ」

「なにすぐ馴れるよ。強い人間は格好じゃない中身だよ・・・」

そこに先輩店員のシゲミが割り込んできた。

「あれ・・どうしたの?あんた達。気の抜けたサイダーみたいだね。
記念に水晶買わない?私が選んであげる、どれ・・・」

「いえ、結構です。この前買ったのがありますから」

「うん知ってるよ、でも今回は数倍パワーアップした石が入荷したんだ。
こんなこと年に2回ぐらいしか無いんだよ」

マリが「シゲミさん、こいつらをからかうのやめて下さい」

「そっかい、予備にもうひとつどうかなと思ったんだけどねぇ」

店内は観光客そっちのけで5人は盛り上がっていた。

 月曜日の全校朝礼が終り教室に戻る途中花岡が声をかけてきた。

「マリ、最近部活に顔出さないけどどうかしたか?」

「うん、パートの仕事が面白くってそっちに行ってるから」

「そっか・・・で、なんのパートやってるんだ?」

「キャバクラのネエちゃんだけど」

「マリ、お前そんなことやってるのか?この学校は夜の接客業は
禁止だべ。黙っててやるからすぐ辞めろ。知れたら停学か退学だぞ。

なんて大胆なこと・・・あ~~頭痛くなる。
で、その店の名前はなんていうの?安いの?いい娘いる?」

「ばっかじゃねえの・・おい、ジッタ、嘘に決まってるだろ・・・
なんで私がホステスするのよ?
それに店の名前聞いてどうする気なんだ?・・・このエロハゲ」

「お前ね、いくらなんでもエロハゲは無いだろう・・・
それ言い過ぎじゃねえのか?心配してるのに・・・」

「言い過ぎじゃないし。だって本当だもん」

「先生泣きたくなるよ。月曜の朝いちからこれだ・・・」

「スピリチュアルショップTGっていうところで店員の仕事
してるの・・・そうだ!先生も一度顔出さない?水晶買ってよ。
そこに凄い美人の双子が交代で働いてるんだよ。

シゲミとアヤミっていう人なんだけどすっごく勉強になるんだ。
修学旅行生からファンレターも届くんだよ。ジッタも見においでよ」

「先生をビックリさせるなよ・・・そのうち暇になったら行くよ。
たまには部活にも顔出せよじゃあな」

「は~~い、わかりました」


 その日の夕方だった。店に場違いのオッサンが入ってきた。

「いらっしゃいませ~~」先輩シゲミが満面の笑みを浮かべていた。

「あの~~こちらに山田麻理枝という店員さんおられますか?」

「はい、おりますけど・・今、休憩に入ってますが呼びますか?」

「いえ、店内を眺めて待ってます。あっ、申し遅れました。
僕はマリの学校の教師をしてます」

話しの途中でシゲミが「鼻をかじった先生でしょ?マリちゃんから
聞いてます。私も一度お会いしたかったんです」

「あっ、そうですか・・・もしかしてあなたはシゲミさんですか?」
目尻がだらしなく下がっていた。

「はい、シゲミで~~す。はじめまして・・・」

「マリがお世話になっております。どんどん世間というものを
教えてあげて下さい。私からもお願いいたします」

そこに例の3人組が入ってきた。

「シゲミさんお疲れ様っす・・・」

「おう、来たか・・・マリちゃん休憩中。もう戻る頃だけど・・」

「は~~い、待ってま~~す」

花岡の脳裏には「これが噂の3人組か・・・」

そこにマリが「ただいま戻りました」

「あれ・・・ジッタどうしたの?来てくれたの?うれし~~い。
なんか買ってけよ・・・」

「うん、この辺に用事あって来たからさ・・・ついでに寄ったよ」

「嘘だろ、私の顔を見に来たんだろ。みんな、こちらが鼻をカジッタ先生。
ややハゲで独身、彼女いない歴・・・???何年さ?因みに私を嫁に
するのが先生の夢なの・・・」

「いない歴約10年・・・お前なに言わせるんだ?」

全員、吹き出して笑った。

「まっ、こんな先生です。で、こっちが友達の3人集。
先生、こいつらこの私を倉庫の陰で喝あげしたんだよ。

だから私、一発殴ってやったんだ。それからの付き合い。
どう?見てくれも普通でしょ・・・先生の言うとおり
髪もちゃんと黒く染めたんだから。

そしてこの綺麗なお姉さんが???ど・どっちだっけ?」

シゲミは「マリ・・・お前ね・・・ぶっ飛ばすよ」

「そうです、『ぶっ飛ばすよ』はシゲミ姉さんです。
因みに『ぶん殴るよ』がアヤミ姉さんです。以上」

また、他の客そっちのけで5人は盛り上がっていた。

そこに店主のテイジが戻ってきた。

「君達駄目だよ・・・接客しないと・・・」

と、次の瞬間花岡の顔をじっと見ていたテイジが「もしかして
鼻をカジッタか???」

「えっ???・・・???テ・イ・ジ・・・?」

「おう、ジッタ久しぶり!これ俺の店なんだ。ジッタは何やってるの?
なんでここに?」

「うん、教え子のマリがここでパートしてるって聞いたから様子うかがいに
寄ったんだ。いや~~懐かしいな・・元気だった?」

二人は同じ高校の同級生だった。

こうして閉店後も6人の話しは盛り上がり、花岡は酒とジュースを買い、
テイジは酒とつまみを買い、シゲミの双子の姉アヤミも呼んで盛大に盛り上がった。

END
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